あんまり笑顔をみせてくれないカフェの店員さん。背の高い、無理めの美人さんで、ちょっと苦手。でも、やっぱり話せたほうが楽しいので、レジであいさつしてくれたとこに、こんにちは。って言ってみた。
「こんにちは」
…いま、口の端で、にやり。とかした。ぜったいした。「しめしめ」って吹き出しに書いてある顔した。
え?まさか、ブラック団!わたしを陥れようって魂胆ですか。「飛んで火に入る夏の虫だぜ」とかって言うんですね。ほんで、「そちもワルよのう。」とかって、フスマの向こうで言ってるんですね。そうはさせません。悪の栄えたためしはありません!…そんな展開ぢゃないですか。そうですか。
「マグカップで…よろしいですか」
…あ、いま噛んだ。ぜったい噛んだ。なんで。わたしなんかやらかしてしまったか。もしかして、わたしの顔にわかりやすく出てたりするのか。苦手な店員さんにあいさつをかえしてみてる。とかって。それだったら、誤解を解かねば。店員さんが美人さんだから、話しかけづらかっただけですよー。とかって言えばいいかな。…そんなことは誰も聞いてないですか。そうですか。
「べ、べつに、アンタにあいさつ返されて、うれしかったわけぢゃないんだから」
…とかって言ってくれると、ツンデレっぽくて、ちょっと嬉しいと思ったりすると思うのですが、ダメですか。そうでか。…そっち系のお店ぢゃないですね。はい。
…
にやり。は、すぐに、いつもの冷静な表情に引っ込めた店員さん。みてろー。ぜーったい笑わせてやる…いや、そのためにカフェに行くわけじゃないんだが…。