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2006/10/22 日曜日

おにぎりの夕方

Filed under: 日記 — murata @ 22:32:21

休日の夕方、都内に向かう上り電車で、四人掛けの席にひとり座ってた おじいさんが食べてた おにぎりが、なんか、とてもおいしそうだったんです。

左手に広げたラップの中のおにぎりは海苔で包んであって、齧ったとこからは、白いごはんと、赤い梅干だか紫蘇の葉だかが覗いていて、それをおじいさんは、背中を丸めて齧って、ときおり口のなかで音を立てながら食べていて、なんか、ほんとにおいしいものを食べてるって雰囲気がするのです。

いい塩梅にくたびれた背広姿。
おじいさんは、たぶん北品川のあたりに、あのあたりであさりが獲れた昔から住んでいて、娘さんは茅ヶ崎あたりにお嫁にいって、もうお孫さんも大きくなって、長野あたりの学校を出て、そのままそこで結婚してて、そのお孫さんがひさしぶりに、生まれたばかりの赤ちゃんを連れて実家に帰ってくるというので、おじいさんは、朝から家を出て、ひ孫の顔を観に、娘さんのとこに出かけて行って、その帰りなのにちがいありません。

ひ孫の顔は、まだくしゃくしゃで、そういえば、娘が生まれたときもこんなだったな。と思い出すんです。お孫さんが抱き上げた赤ちゃんを、おじいさんが受け取ったとたん、赤ちゃんが手足を ばたつかせながら、大きな声で泣き出したので、あわててお孫さんの腕に返すんです。娘さんもお孫さんも、そのおじいさんの様子をみて、声を出して笑ってるんです。

おじいさんは、ひ孫の顔を観ながら、ほんとはお酒を飲みたかったんだけど、娘さんがいい顔をしないので、娘さんの旦那さんと、お孫さんの旦那さんと三人で、ビールの大ビンを1本飲んだだけだったんです。でも、それが今頃になってもちょっとだけ気持ちいいままなのです。

おにぎりは、あんまり料理の得意じゃないお孫さんが、電車の中で食べてね。って言って、渡してくれたんです。でも、ごはんだけは、新米を厚釜のIHジャーで炊いたんで、冷めてもおいしいんす。

おじいさんは、きっともったいなくて食べれなくて、でも日が落ちて窓に映る自分の顔を見てると、ちょっと寂しくなって、電車の中で食べてって言ってくれたお孫さんの声を思い出して、包みを広げたんです。

おじいさんは、たぶん電車を降りて、うちに帰るまでの道すがら、きょうはいい一日だったなあと思うんです。

駅前のファッションビルがなくなってしまって、いっしょになくなったと思ってたテナントのカレー屋さんを、別のテナントビルでたまたま見つけて、ひさしぶりにおみせのおばちゃんとおしゃべりして、おいしいカレーを食べた帰りの電車の中での空想です。

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