横浜の繁華街、関内。その裏通りの小料理屋さん。
戦前に生まれて、戦争中は中国にいて、終戦で日本に引き上げてきてからは、この小さなお店で子供たちを育てて…
そんな話しをしてくれた おばあちゃんのお店。
「イイ男しか相手にしないんだよ」
そんな顔をして、おばあちゃんの飼い猫が相手をしてくれたお店。
おばあちゃんが体を壊したあとは、息子さんが守ってきたお店。
お客さんの即興のギターや、ザ・ゴールデンカップスの話しに時間の経つのも忘れたお店。
きょう、半年ぶりに訪ねたら、月末に立ち退きで店じまいなのだそうです。
お店が立ち退いたその後にはマンションが建つそうです。
この街には、新しいマンションがいくつも建ちました。
マンションにあわせるように、大きなパチンコ屋さんもいくつもできました。
小さな飲食店がいくつもなくなりました。
映画館がなくなりました。靴磨きのおばちゃんがいなくなりました。
どこでも見かけるチェーン店のカンバンばかりが目立つようになりました。
「この街に未練はないよ」
もうすぐなくなるお店の中、そんなつぶやきが聞こえました。