ロシアは嫌いじゃありません。むしろ ソ連マニア に親近感を覚えるほど好きです。
太田莉菜ちゃん だって、相武紗季ちゃん のつぎくらいには好きです。もちろん推定身長153cmでショートボブの店員さん には、かないっこないのですけど、よく健闘しているほうだと思います。
新年会だって、渋谷のロシア料理のお店だったのです。ピロシキだってボルシチだって、おいしくいただいたのです。
でも、でもですね。いま、わたしは ここで、おいしいコーヒーをいただいきながら、宮部みゆきさんの時代小説を読んでいるのです。おりんちゃんのけなげさに、涙すらしているのです。
だから、ロシアンパブの常連さんがわたしの隣のテーブルにいたのをみかけて、同伴出勤しようと お店に入ったのなら、お姉さんは、そちらテーブルの前でしゃべっててほしいのです。
なにも、はす向かいの椅子をわざわざ、こっちにずらさなくていいのです。どうせ、はす向かいなんて言っても、わかんないんでしょ。日本語すら通じないお姉さんが、どんなに若い頃のシャーロット・ランプリングに似てても興味ないんですから。
興味なんか、ないったら、ないんです。ないんですってばっ!
もうひとりのお姉さんを呼んで、隣のテーブルで暇そうにしている わたし も同伴してお店に行こうって企てなのですね。そしたら遅刻してもいいなんて、携帯に向かって喋っているロシア語の単語くらいわかるのです。
NHKでやってた、ロシア語会話に 太田莉菜ちゃん が出てたのを知らないんですね。一年間、ばっちり観てたんですから。
こうなったら、もうひとりのお姉さんが来るまで、このテーブルに居てやります。反対のテーブルが空いても、移ったりしません。そのあいだも、おりんちゃんは、両親を助けてけなげです。でも、泣いたりなんかするもんか。です。
おりんちゃんが差配さんのうちを訪ねる頃にもうひとりのお姉さんがやってきました。
「ここ、いいですか?」
わたしのテーブルの椅子を指差します。やなこっです。でも、もういい時間なので席を立つ準備をはじめるのです。椅子の脇に置いていた仕事の機材を抱え上げます。
「かえる?」
はす向かいのお姉さんが疑問形で訊いてきます。オウム返しに返事をしておくのです。
「これなに?」
機材に手を伸ばしてきます。思わず厳しい声が出てしまいます。
「ごめんなさい」の言葉は聞こえたのです。でも、もう聞こえないふりです。あああああ。です。
だからあ、わたしは、ここでおいしいコーヒーをいただいきながら、宮部みゆきさんの時代小説を読んでいたのです。おりんちゃんのけなげさに、涙していたかっただけなのです。
推定身長153cmでショートボブの店員さん でも、相武紗季ちゃん でも、太田莉菜ちゃん でもないお姉さんに、おりんちゃんの邪魔なんかされてたまるか。なのです。
ロシアンマフィアとか、ロシアのジャーナリストの暗殺事件とか、そういうのも巻き込まれたりしたくないのです。(たぶん違う)