「あれ?ひさしぶりー」
十数年ぶりの友人に、懐かしい声で話しかけられました。
「帰ってたんだ。なつかしいね」
その頃、近所に住んでいた友人。休日には絵を描いている姿があり、なんどか短編小説が地方紙に掲載され、夢は天空を駆け巡っていた、すこしだけ年上の友人。
そして、もっと小さい頃には憧れのお姉さん。
「子供、三人いるんだよ」
子供のことを聞くと、とびきりの笑顔で、あの頃のぼくと同じ年頃の子供がいることを話してくれます。どこかで夢をあきらめてしまっても、その笑顔は、それを補って余りあるものを見つけたことを想わせてくれました。
「来年は帰ってくるの?また会おうね」
ぼくは、ぼくが過ごしてきた日々を、彼女と同じ笑顔で、彼女に話すことができそうにありません。彼女が夢にむかって払ったほどの努力をしていないし、彼女があきらめたほどのものを失っていないし、彼女が見つけたほどのものをまだ見つけていません。
憧れのお姉さんの笑顔に、すこしだけ人生を振り返ってしまいました。