お昼を食べそびれたので、スターバックスで、少し遅めのお昼です。
選んだのは、ソーセージをパイ生地でつつんで焼いてある、ソーセージパイ。
外皮がぱりぱりで美味しいのです。
暖めてもらったソーセージパイと、飲み物をトレイに載せてテーブルに着くと、空いたテーブルを挟んだ、ふたつ隣りのテーブルのお姉さんの笑顔が目に入ります。
最近ちょっとしたきっかけがあって、ごあいさつを交わすようになったお姉さん。きょうはお休みなのか、デミタスカップを置いたテーブルにノートを広げています。
…そのちょっとしたきっかけというのには、悪いひとたちに追われてたお姉さんを助けたとか、秘密警察に職務質問されたところを助けてもらったとか、手に手をとって国境を越えたとか、そんなドラマティックなことは、まったくありません。
お姉さんにごあいさつを返して、トレイのソーセージパイに顔を向けました。
そこで、きょう最大…あるいは今週最大の失策に気づいてしまったのです。
そう、このソーセージパイ、ぱりぱりの皮をこぼさずに食べることができないのです…。
このままでは、ぱりぱりの皮をポロポロとこぼしながらソーセージパイを食べているところをお姉さんに見られてしまいます。だからといって、ソーセージパイに口を付けないというのも、印象が悪そうなのです。
せっかくいままで、ねこをかぶって…いや、ねこはかぶってないです…好印象を持ってもらっていたのに、すべてが元のモクアミです…元のモクアミの使いかたがまちがってますが、そんなことを気にしてるときではありません。
しかもお姉さん、きょうはひざ丈のパンツがかわいいのです。いや、お姉さん、いつもかわいいのです。推定身長153cmです。でもいまは、お姉さんがかわいいということも重要ではありません。…すいません。やっぱり重要です。
ソーセージロールに手を付けられずにいると、お姉さんとの間のテーブルに新しいお客さんが座りました。助けに船です。…助けに船なんてはじめて使ってみました。使い方はこれであっていると思うのです。
ピアーチェ・ディ・クエスタ・うんじゃら…とかと向かいの席の女性と喋っているのが耳に入ります。イタリア語です。たぶん。困ったときにはイタリア人のひとです。頼りになります。ブラビースィモです。
これで少しくらい、ソーセージパイの皮をこぼしてもお姉さんから見られる心配はなくなりました。
こちらからお姉さんの様子がうかがえないのは残念ですが、きょうのところは、それより好印象のほうが重要です。
すると、お姉さんが立ち上がるのが視界の隅に入ります。
もう帰るのかな?あいさつしなきゃな…と思ってたら、お姉さんは、カップやノートを向かいのテーブルに移しています。ちょうどはす向いの席です。
あの席だとソーセージパイをこぼしながら食べているのが、ぜんぶ見られてしまいます。
気づくと、隣りのテーブルのイタリア人、止まることなく喋っています。さすがイタリア人です。きっとこのせいです。お姉さんがテーブルを移ったのは。イタリア人うるさいです。あ、でも、個人的にイタリア人は嫌いじゃありません。加藤ローサちゃんとか大好きです。…すいません。ここでは関係ありません。
ソーセージパイ、お姉さんに見られたくなくて、いよいよ手をつけれません…。
ソーセージパイをこぼさずに食べれる方法、ご存知のかたは教えてください。
…ちなみに、「ひとくちで食べる」という提案は、辞退いたします。